さて、皆さんも一度や二度は見聞きにした事があると思いますが、演奏に対する批評において時折この様なお約束フレーズを見かけます。曰く
「確かに上手いが、技巧ばっかりで中身が無い」
「指が速く正確に動けば良いってものじゃない」
さらに、上記の様な意見から派生して、技巧的な演奏が好きなリスナーに対して次の様な
「そんなに正確な演奏が好きなら、打ち込みによる演奏を聴いていれば良いんじゃないの?」
言いたい事は分らなくも無いです。 し か し 、です。
例えば、人間がどれだけ速く走っても時速40㎞程度しか出せず、スピードに乗った中古の原付にすら追いつけないと言う事実は誰もが知っています。しかし、原付の走る姿をガッツリ見る人は余りいないと思いますが、オリンピックの100m走は多くの人々が固唾を呑んで見守ります。
この様に、人類の持つ能力の限界への挑戦は多くの人々の興味をかき立てる事であります。この事はスポーツに限らず音楽の世界でも同じで、例えば、昔から「世界一の技巧を持つピアニストは誰か?」と言う議論が一部からの「世界一がドウコウって、お前は小学生かよ」と言った
そんな中でポリーニが颯爽と登場してDGから「ペトルーシュカ」や「ショパン・練習曲全集」などの録音で圧倒的なインパクトを与え、後のピアニストの高い壁となって立ちはだかったまま現在に至っています。これらの曲の録音を聴く際に、特に技巧面においてポリーニ盤より優れているかどうかが一つの聴き所になっている方も多いのではないでしょうか?(ココで言う”技巧”とは、楽譜に書かれている音符を正確に発音させると言う意味です)
しかし、色々な録音を聴けば聴くほどポリーニDG盤の凄さを再認識させるだけの結果となる場合が多い事は、多くの方達が経験されていると思います。
前置きが長くなりましたが、「楽譜に書かれた音をどれだけ正確かつ明瞭に発音させているか」と言う点で、明らかにポリーニDG盤を上回る録音がこの録音です。
以上
【採点】
◆技巧=お察し下さい
◆個性、アクの強さ=色んな意味で100
◆「”指さえ回れば良い”そんな風に考えてた時期が俺にも…」度=400