2012年12月21日金曜日

雑記・その6 【おすすめの複数枚組(2枚以上)商品やBOXセットの紹介・その1】

 何度か記事中に書いたと思いますが、このブログでは取り上げたCDに関して漠然と「素晴らしい演奏」や「イマイチな演奏」などと書くのではなく、具体的な箇所を明示しながら「どこがどう素晴らしい(悪い)のか」をレビューする事を旨として(いるつもりで)います。

 しかし、年の暮れの忙しい時に細かくレビューする時間が無さそうなので、今回は単純に「寸評付きのお勧めCD紹介」をしようと思います。で、レビューの時は記事が書きやすい事もあって一枚モノのCDばかりをとりあげていますが、今回はよりお買い得感の高い「複数枚組(2枚以上)商品やBOXセット」を取り上げる事にしました。今の時期は年末年始のセールがあるので(と思うので)さらにお買い得になると思います。


なお、商品の詳細な収録曲を全て記載するとそれだけで文章が長くなりすぎますので、興味を持たれた場合はT■w■r Re■ordsやH●Vのサイト等を適宜参照してください。

では、早速参ります。




【ペライア・40周年記念BOX(CD68枚+DVD5枚)】

 今年、ピアノ関連のBOXで最も注目を集めた物がこれではないでしょうか。以前に取り上げたショパンの練習曲集シューマンの交響的練習曲なども当然入っていますし、他にも有名どころの独奏曲・協奏曲をかなり網羅しています。曲数がかなり多いのでですのでさすがに全ての演奏が最高とは行きませんが、基本的にはどれも及第点以上と言っていいと思います。
収録曲に関してもう少し言いますと、基本的に独墺系中心であり、”ロシアもの”はラフマニノフの練習曲などが僅かに入っている程度、”フランスもの”と言えるのはフランクの「前奏曲、コラールとフーガ」くらいで、このBOXを『主要なピアノ曲のカタログ』として見た場合はかなり偏りがある内容と言えます。その代わりと言わんばかりにモーツァルトの楽曲が相当数収録されておりモーツァルトが嫌いな方達にはかなりのマイナス要因だと思いますが、モーツァルトのCDを全て無い物として考えてもまだお買い得感は高いと思います。

 最後に、CD68枚+DVD5枚の大容量な上に、解説やディスコグラフィーや変なポーズを決めたペライアの写真などが載っているブックレット(ページ数が200ページを軽く超えており、これ自体で結構重いです)があるので箱がかなりの大きさになっており、「幅・高さ・奥行」がそれぞれ凡そ「29㎝・17㎝・21㎝」と言うビックサイズです。大雑把なイメージとしては、H●Vが商品の梱包に使う通常サイズ(?)の例のダンボール箱を一回り以上大きくした感じと言えば分かりやすいでしょうか。




【レーゼルの芸術、独奏曲編(13枚+ボーナスCD)】 


 旧東ドイツで生まれてモスクワへ留学して勉強した実力派、ペーター・レーゼルの70~80年代の録音を集めたBOXです。

 レーゼルはモスクワで学んだわりに、大袈裟な強弱表現・テンポ変化に深いペダリングによる豊か(過剰)な響きを伴ったようないわゆる「ロシア臭い演奏」はまずしせません。むしろその逆に抑制的なペダリングによる引き締まった(乾いた)響きと、生真面目なほどキッチリとした拍感を伴ったインテンポ主体の演奏をします。その特徴が顕著に表れているのがCD・1の「バッハ/ブゾーニ編曲集」に収録されている「シャコンヌ」で、大抵の奏者は荘厳さを演出しようとするあまり冒頭から重い足取りの演奏をしてしまいがちですが、レーゼルはまるでメトロノームを目安にしているかの様にサクサクと進んでいきます。
 このBOXには前述のブゾーニ編曲ものやブラームスのピアノソナタ全曲やパガニーニ変奏曲やヘンデル変奏曲、ベートーヴェンのハンマークラヴィーア、シューマンの交響的練習曲等のような難曲も多く含まれていますが、彼持ち前の高い技巧によってどれも高いレヴェルの演奏を聴かせています。

 ただ、抑制気味なペダルはドビュッシーの諸作品でも聴かれるので「もう少し潤いが欲しい」と感じる方も居るかもしれませんし、先程も言ったとおり全体的には高レヴェルなものの、ボーナスCDの「ペトルーシュカからの3楽章」は何故かいまいちな出来なのでそれを目当てにされている方は余り期待しない方がいいと思います。
また、収録されたCD13枚(+ボーナスCD)の中の5枚がブラームスの作品なのでブラームス嫌いの方にはネックになりますね。

なお、このBOXは紙ジャケ仕様なので余り場所を取らない事も利点と言えます。

ちなみに、このBOXの「協奏曲編」も出ています。独奏曲編を聴いて興味を持たれた方はお聴きください(室内楽集もありますが、未聴なので省略します)。






【アンスネス:ラフマニノフ・ピアノ協奏曲全集(2枚組)】 


 アンスネスが以前から録音してきたものをまとめた全集です。アンスネスの第3番の録音にはパッパーノの指揮でスタジオ録音したものとベルグルンドの指揮でライヴ録音したものの二種類がありますが、これに収録されているのは前者のスタジオ録音のみのようです(私自身は全て単品で購入しました)。

 演奏に関しては特筆する事はこれと言って無いいつものアンスネス節で、極めて安定した端整で癖のない演奏を聴かせています。
 技巧の高さ、安定度で言えばトップクラスに入る事は間違いなく、例えば2番に関して言うと有名なリヒテル盤と比較すると明らかにアンスネスの方が上手いんですが、いかにもロシアっぽい演奏がお好きな方はリヒテル盤を聴いておく方が懸命だと思います(アンスネスにそれを求めてもしょうがないですから)。

意外とありそうで無い「高レヴェルで癖がない模範演奏的なラフマニノフのピアノ協奏曲全集」をお探し方は是非これを聴いてみてください。

なお、第3番の例のカデンツァは大カデンツァです。「大カデンツァとかって何?」と言う方はコチラを御覧下さい。



【ルガンスキー:ラフマニノフ・ピアノ協奏曲全集&変奏曲集(3CD)】 

先ほどのアンスネスの全集とは正反対の傾向と言えるルガンスキーの全集です。なお、アンスネスの全集には含まれていないパガニーニの主題による狂詩曲や、独奏曲のコレルリの主題による変奏曲ショパンの主題による変奏曲も含まれていて、ロシアン・ピアニズムの保守本流(?)と言えるルガンスキーが「これぞまさにラフマニノフ」と言える濃厚な演奏を全曲で聴かせています。

 アンスネスと比較するとルガンスキーの演奏は粒立ちの良い鋭い打鍵と強靭なフォルテが際立ち(勿論アンスネスもそれらの点に関しても高レヴェルですが、あくまでルガンスキーと比較した時の話です)、そしてそれら以上に深いペダリングが強く印象に残ります。
しかし、その深すぎるペダリングによって要所要所で細部ボヤける事がありますが、それがロシアンっぽさを感じさせる要素とも言えます(逆にペダリングの清潔さがアンスネスの演奏を端整なものにしている一因と言えます)。
出来ればアンスネスとルガンスキーと言う現代屈指の技巧派二人による毛色の違う全集を聴き比べるのも面白いのではないでしょうか。

ちなみに3番のカデンツァは通常のものです。

なお、コストパフォーマンスと言う点ではここで紹介している商品を全て含んでいるこの【ルガンスキー:エラート録音集】の方が上ですが、

この商品を持っていない上、これに含まれる全ての音源を聴いた訳でもないので大々的に御紹介する事を控えました(早い話、こっちの方がお得って事です)。





あ、まだ御紹介したい商品があるんですけど記事が長くなりすぎましたので、この企画の第二段を数日の内にUPしようと思います。